線型代数2026授業日誌

教室の定員に達しましたので、追加の登録はできません。

各自、講義ノートを印刷し、 シラバスにしたがって学習していきます。
シラバスは印刷したものを1回目の授業時に教室でも配布の予定。
質問等はメールで問い合わせください(メールアドレスはシラバスに書いてあります)。

成績評価のための試験については、後ほど詳細をお知らせします。

追加資料です。演習時に使うかも知れません。

ネット上の参考書など

  1. 黒田先生の講義ノートは、 この授業との要所要所での親和性が高そうなので、復習・演習にどうぞ。ただし、実践的というよりは、理念的な章立てではある。
  2. 演習線形代数学という問題集もあります。中身は詳しく見てませんが、つまみ食いすると良いかも。
  3. 昔作ったweb教材である 行列代数これだけ は、最低限度の内容ながらありがたいことに今も生きていて、これの利用も可能です。
  4. ついでに、ベクトルの歴史的な背景については ベクトルあれこれ をご覧ください。
  5. 動画も沢山見つかりますが、一つ挙げると、英語の勉強にもなる Gilbert Strang はいかがでしょうか。以前の transcript は手抜きでしたが、今は正確です。
  6. 追加です。 線形代数学というのを見つけました。テキストで挙げた問題点は解消しませんが、図が多くあり説明も親しみやすくかつ無理のないものになっているようです。

授業日誌は毎週更新していきます。古いのが表示されるようでしたら、再読込をしてみて下さい。

最後に 須田先生の言葉をお借りして。


直線と平面の幾何学(4/16)

今週と来週は試運転モード、ゆっくりと。その後は加速していきます。

まずは、のぞましい受講の仕方について書いておきます。

授業を聞いて、その内容を復習し、練習のための問題を解いて、というサイクルを繰り返すことが多いのですが、
また、それでも何とかなるとは思いますが、この授業のような基本科目では、それをもう一段前に進めて、授業を聞く前の予習をぜひ。
これは、新しい内容に取り掛かるための準備ともなるもので、テキストの該当箇所に予め目を通しておきます。
そうして、ひっかかる説明箇所があれば、不明点が何かをメモして、授業に臨みます。

授業では、こちらからの話を一方的に聞くのではなく、質問を発するなどして疑問点を解消すべく努めます。
この予習をしやすくするために、毎回の授業内容は前もって、ここで公開していきます。

今日は、座標空間の中の直線と平面の方程式です。テキストの2章を読解します。
テキストでは、座標の前段階として位置ベクトルを説明し、その成分表示として座標を導入してみました。
これは歴史の順序と逆ではあるのですが、ベクトルの考え方というのが、それなりに高度ということでもあります。
高校以来、色々と経験があるでしょうから、ここも復習程度で結構です。位置ベクトルの成分と座標との関係をその違いも含めて認識しておきます。
凸結合と座標変換については、流す程度で構いません。必要になったときに見直せばよいので。
位置ベクトルあるいは物理でよく使われる変位ベクトルというのは、 結構新しい(といっても江戸後期の)ものであることを指摘しておきます。
ベクトルは一方で内積と結びつけることで距離的情報(角度の情報を含む)を併せ持つもので、 そこから数量的な処理への道が開けてきます。
テキストでは触れなかった(正確には後の方で出てくる)ものに正射影があります。 ネットで検索すれば沢山見つかります。例えば、
manabitimes、 puchohan、 todai-counseling、 minami106 といったように。
受験数学的には「正射影ベクトルの公式」として知られているもののようですが、 こういった「公式」を覚える必要は全くありません。
正射影の意味を知り、それを内積と結びつけて、必要なところでその都度導きます。 面倒がらずにそうして下さい。そうすることで初めて「正射影の感覚」が身につきます。
ただ暗記して使うだけでばブラックボックスでしかなく闇夜を照らす光にはなりえません。
方向ベクトルを用いた直線のパラメータ表示は良いでしょうか。これの2次元版として平面のパラメータ表示があります。
より重要であるのは、その座標表示で、平面の方程式を導きます。法線ベクトルの意味とその現れ方に注意します。 直線の方程式は、パラメータを消去することで導きます。
仕上げとして例2.1と問2.3で練習しておいてください。今日はここまでです。

例 2.1: (i) $L$ の表示式からパラメータ $t$ を消去すると、 \[ \frac{x-1}{3} = \frac{y-2}{2} = z-3 \] となる。これは2つの平面 $2x-3y+4 = 0$, $y-2z+4 = 0$ の共通部分として直線を表わしている。
$H$ の表示式 \[ x = 1 - s + t, \quad y = 1 + s - t, \quad z = -1 + s + t \] からパラメータ $s$, $t$ を消去する(例えば、後の2つの式を $s$, $t$ について解いて、それを最初の式に代入する)と、 $x+y = 2$ となる。これは $z$軸に平行な平面を表わしている。
(ii) はヒントだけ、$L$: 例えば $x=t$ をパラメータと思って、$L$ の式を $y$, $z$ について解く。
法線ベクトル $(\sqrt{2},-1,2)$ と直交するベクトル $(\alpha,\beta,\gamma)$ は、 $\sqrt{2}\alpha - \beta + 2\gamma = 0$ を満たすものなので、そのようなもの(で独立なもの)を2つ選び、 平面のパラメータ表示式に当てはめてみる。

計算練習は計算練習として、ここでは、口頭試問的なものを一つ。答えは本文2章の中にあるのだが、 それがどれだけ見えているかという質問。
Q: 座標とベクトルの成分表示の違いについて説明せよ。

平面の方程式と連立一次方程式(4/23)

今年はあつくも天白渓の藤の花。

今日は、先週の続きとして、点と平面の間の距離公式(これも覚える必要なし)をします。 大事なのはその考え方で、理解できたかどうかは問2.5で確認します。
それが終わったら、連立一次方程式の幾何学的意味に進みます。これは、3つの平面の相対的な位置関係でもあり、 場合を分けることで処理します。
この、場合に分ける、それも適切に分ける、ということがとても重要ですが、面倒だったり間違えたりします。
テキストでは、3つをいっぺんに考えるのではなく、まず2つの平面の位置関係を分類し、それに平面をもう一つ追加したらどうなるかといった考え方をしました。
こうして得られた結果を、全体的な位置関係から見直したらどうなるか、というのが三角柱のところの説明です。
解なしでも色々な場合があることを実感していただきます。問2.7で確認します。この「多様性」は、後で「掃き出し法」として一般化されます。

以下、気になる人のための Q and A をいくつか再録しておきます。(気にならない人は無視してください。)

Q: テキストp10下の式に、$w = (\overrightarrow{n}|q-p_0)$ とありますが、どうしてこのように表せるのですか。
A: 少し上にある $q-p_0 = u\overrightarrow{l} + v\overrightarrow{m} + w\overrightarrow{n}$ を使うと、 \[ (\overrightarrow{n}|q-p_0) = (\overrightarrow{n}|u\overrightarrow{l} + v\overrightarrow{m} + w\overrightarrow{n}) = u(\overrightarrow{n}|\overrightarrow{l}) + v(\overrightarrow{n}|\overrightarrow{m}) + w(\overrightarrow{n}|\overrightarrow{n}) = w \] となるからです。

Q:「ユークリッド空間の作り方で、移動ベクトル全体 V を代数的構造を有するものとしてまず定式化し、 さらに内積の情報を付与したもの(内積空間とよばれる)を用意しておく。
その上で、 ユークリッド空間 (Euclidean space) とは、 内積空間のベクトルが平行移動を引き起こすような点の集まりで あるとする」
という部分が難しい言葉が多く読み込んでもわからないのでもうすこし噛み砕いた簡潔な説明をしていただければありがたいです。
A: これは、さらに調べる際のヒント(キーワード)のつもりで「簡潔に」書き入れたものです。 噛み砕くと説明は長くなりますし、それも結構な長さになります。 例えば、ヘルマン・ワイル「空間・時間・物質 上」(ちくま学術文庫)の1章をご覧ください。
噛み砕いた簡潔な説明、というのは大胆かつ欲張りな要求で、レポートあるいは試験の答案で是非披露して、と思ったことであった。

以上で2章が終了となります。かつては、ここまでが高校の守備範囲でした。
次回から「行列」に入りますが、その動機づけというか歴史的な出処というか人の思いが1章にあります。 連休の間に、こちらも是非。

問2.4: 色々な解き方が考えられますが、ここでは直線 $L$ のパラメータ表示を使ってみます。 そのパラメータ表示ですが、連立一次方程式 \[ x + 2y + 3z = -1, \quad -x + y = 1 \] を「解く」ことを試みます。解くと言っても未知数が3個で方程式の数が2個しかないので、解が不定の場合になっています。
そこで、3つの文字のうち一つをパラメータとし、残りの2文字について解きます。 例えば、$z=t$ をパラメータとし、 \[ x + 2y = -3t - 1, \quad -x + y = 1 \] を $x$, $y$ について解けば、$L$ 上の点の座標 $(x,y,z)$ が $t$ の一次式で表わされます。
あとは、この点 $p$ と点 $q(1,1,0)$ との距離の2乗 $|pq|^2$ を計算すると、$t$ の2次式が得られるので、それを最小にする $t$ を求め、 そのときの座標 $(x,y,z)$ と距離 $|pq|$ が求めるものとなります。

問2.5: $L$ のパラメータ表示を使い $L$ を含む平面の方程式を記述する、あるいは $L$ を含む平面の方程式を書き下す、といった方法が考えられます。
ここでは、後者でやってみます。そのために $L$ の方向ベクトルである $(1,1,1)$ と直交するベクトル $(\alpha,\beta,\gamma)$ が $\alpha + \beta + \gamma = 0$ を満たすことから、そのようなベクトルとして例えば \[ (1,-1,0), \quad (0,1,-1), \quad (1,0,-1) \] を取ってみて、これらを法線ベクトルとし、$L$ 上の点である $(0,0,0)$ を通る平面の方程式を書けばしまい。
このようなベクトルの選び方は無数にあることから、条件をみたす連立一次方程式も無数にあることになります。

来週は、早くも1回目の試験です。40分で2問。範囲は狭いので、例と問で、しっかり準備を。

まとめと試験1(4/30)

雨上がりに雪のまぼろしが消え、つつじも盛りを過ぎつつ陽の光。

今日は軽く復習のあとで、1回目の試験を40分ほど行いました。
平面の方程式と直線のベクトル表示についての易しい問題が2題。
試験範囲は、ほぼ高校の内容の復習+補足といったものなので、高校のベクトルが前提となります。 もし忘れているようであれば、そこも含めた練習をするとよいでしょう。
どこまで戻ればよいかは人によるので一律には言えませんが、 そういった作業をしてなおかつ不明のところはできるだけ具体的に質問してみてください。

試験は1題につき2点満点ですが、よい答案には3点つけることもあります。
各自の得点は、TACT の成績簿で確認できます。
点数の分布です。
4---48人、3---17人、2---3人

来週からは、心機一転、行列の基礎を学んでいきます。テキストの1章に目を通しておいてください。

宿題の解答を早く見たいという要望がありました。もっとも手っ取り早い方法は、問題文を検索にかけ AI に解答させることです。
例えば、
直線 L : x + 2y + 3z = −1, −x + y = 1 上の点で、点 q(1, 1, 0) との距離が最小となるものを求めよ
で検索してみてください。ほぼ完璧な解答が得られると思います。 込み入った数式は、テック (TeX) 表記で入力してやれば、AI の方で適切に解釈してくれます。
ネットの質問サイトがほぼ無意味になったように思えます。AI と競うのではなく、AI を賢く使いこなすためにも、地道な経験の積み重ねが大切になります。

行列とその計算(5/7)

今春も季節の進みが早く、こぶしもとうに散り。

連休も明け、気分新たに行列です。
「事始め」に目を通した人は、その計算規則に違和感は感じられないかと思いますが、 計算できるかどうかはまた別の話なので、しっかりと稽古を。
テキストには、そういう意味での計算に慣れる問題は載せていません。 自分で適当に作るか、そういったことが書いてあるテキスト(例えば、Chen 先生の)で練習してみます。

Q:12ページの中段ぐらいに書いてある「単位行列とクロネッカーのデルタ記号」 のすぐ下に書いてある $\delta_{j,k} =$ のところの意味がよく分かりません。 場合分けが必要ということでしょうか。
A:はい、場合分けで値を決めております。添字(ラベル)の $j$ と $k$ が等しいときは $1$ という数を、 異なる場合は $0$ を表わします。具体的に、$n=3$ であれば、 \[ I_3 = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0\\ 0 & 1 & 0\\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \] という形の行列が3次の単位行列で、これの各成分がクロネッカーのデルタ記号で表わされています。

動画が見たいということであれば、これも色々ある中で、 線形代数入門 を挙げておきます。世間ではこれを yobinori というらしい。
黒板の「カタカタ」書きといい、面白いですねえ。
今後も折りに触れてそういったものも紹介してみたいと思います。

問3.6のような問題は、何をしていいかわからないので、ヒントをください、という人が多いかも知れませんが、 それを自ら見つけ出すのが経験というものです。
失敗してもよいのであれこれやってみる態度がとても大事です。
あっさり諦めるのは論外としても、すぐに答えを見るというのも問題があり、幸せにはなれません。
$AB \not= BA$ というのであるから、$A$ も $B$ も零行列だと具合が悪いわけですが、一方で $AB = 0$ でもあるという。
$A$, $B$ の成分を一般の文字にして、$AB = 0$ を書いて調べてみても良いのですが、零行列に近いものとして、 たとえば \[ B = \begin{pmatrix} 1 & 0\\ 0 & 0 \end{pmatrix} \] とでも置いてみて、 \[ A = \begin{pmatrix} a & b\\ c & d \end{pmatrix} \] に右から掛けてみると、$AB = 0$ となるのは、$a = c = 0$ のときだとわかります。そこで、$AB$ と $BA$ を計算してみると \[ AB = \begin{pmatrix} 0 & b\\ 0 & d \end{pmatrix}, \quad BA = \begin{pmatrix} 0 & b\\ 0 & 0 \end{pmatrix} \] となるので、$AB \not= BA \Longleftrightarrow d \not= 0$ ということで、そのような $A$ は沢山あることがわかります。

AI に行列を尋ねるときは、2行3列であれば
[a b c]
[d e f]
のように書くと良いでしょう。

行列あれこれ(5/14)

季節は行きつ戻りつ、白ヤシオも遥かに薄くけむりて。

行列の続きです。 行列は、数が並んだだけと言えばそれまでですが、実際には様々な意味を伴って現れます。
今日はそういった行列の意味と計算の規則(とくに冪)が結び付けられる例を二つ程 見ていきます。

まずは、行列の積の結合法則の復習から。3つ以上何個の積でも意味をもつということですが、当たり前のことではありません。
これは同一の正方行列のくり返し積(べきという)でも同じことで、行列べきの指数法則が成り立つ理由でもあります。
(このことを明記してある教科書は稀なので、専門家と言えども習慣にはとらわれがち、ということでもあります。)
ということで、例3.5と問3.7 で稽古します。

本題に戻り、最初の例は、連立漸化式の行列による表示であり、
数列ならぬベクトル列(ここの列は行列の列ではなく、英語で sequence と呼ばれるもの)の間の関係式が、
正方行列による積として、あたかも等比数列のような形で表わされる点に注目します。
そうすると、等比数列の一般項を書き下すのと同じ要領で、 連立漸化式の一般項が、行列の冪乗を計算するという問題に還元されることがわかります。
これは、漸化式が解けたというよりは、 漸化式を解くことと行列の冪を求めることが同じ内容である、 言い換えになっているという事実を確かめたということです。
(正方)行列の冪を求める理由の一つが見つかった、と考えることもできます。
その計算のための具体的な方法は、後期の最初の方で出てきます。

次の例は、ネットワーク(点を線で結んだ情報)を正方行列で表示するというもので、 まさにネット社会における行列の重要性を端的に表わすものとなっています。
この場合の行列の$n$乗の意味ですが、点と線を、都市間の道路網と見た時に、 $n$ 回の移動をくり返したときに、2点間を結ぶ移動経路が何通り考えられるか という場合の数を表わします。
問3.10の図では、3点間の道路網(?)を表わしているので、 $n=2$, $n=3$ の場合の数を具体的に求め、それと行列の2乗、3乗を計算した結果を比べてみて下さい。
場合の数を計算する際の積和の法則(場合分け)が、 行列の積の計算に丁度対応することが納得できれば成功です。
すぐにその仕組みが見えなくても、くり返し試みていただければと思います。
大事なことは覚えて計算することではなく、計算してその意味を知ることです。

ということで、初めての人には手応え十分かも知れませんが、 問3.7に是非挑戦してみて下さい。

次に書いてある行列の分割計算は、そういったもの(見方)がある、といった程度で取り敢えず結構です。
これも必要になったら、必要になった範囲で復習していきます。

来週21日は、2回目のまとめと試験です。

どうも宿題の番号がずれているようですが、とりあえずこのままにしておきます。
問 3.7 の解答ですが、行列 (A + B)^3 の展開式、と google に聞いてみてください。AIの概要というりっぱな解説が得られます。
問 3.8 であれば、数式を表わすのに TeX 記法を適宜つかって、 A = (s_1,\dots,s_n)^T (t_1,\dots,t_n) のとき (I+A)^m を求めよ、と聞いてみます。やはり、申し分のない解説が得られます。
問 3.10 のように図が関係した問題は、工夫がいるでしょうが、上手に聞いてやれば、適切な解答が表示されると思います。
ということで、解答例をここに載せることは原則やめにします。悪しからず。

まとめと試験2(5/21)

知らぬ間の田植えにホトトギスも喧(かまびす)しく、なんじゃもんじゃの花。

まとめと2回目の試験でした。

[講評] 説明がまったく足りない人が目立ってきました。次回くらいから減点の対象です。ご注意ください。
$\fbox{1}$ 直前の復習が効いたか概ねできていました。
$\fbox{2}$ こちらも普通にできていたと思います。ただ、グラフと行列の関係を全く理解していないものもちらほらと。
点数の分布です。今回の5点は、多分におまけの気分。
5---8人、4---41人、3---16人、2---3人

行列式とその計算(5/28)

曇天に桑の実も心なしか頼りなげに。
大変なときにこそ本当の自分が見える、かも知れない。

ということで、今日から行列式です。4章と5章、量は多めです。
昔は、この程度の分量を4月からガンガン行う授業もごく普通でした。 今回はそれも味わっていただきます。

まず文字係数の連立一次方程式を解きます。
分母が零かどうかは気にしなくてよろしい、とりあえず。

解の公式の形に注目します。似た式が塊で現れることに気がつくはずです。
その中の分母に共通して現れる式が行列式と呼ばれるものです。
英語だと determinant(決定式)。連立一次方程式の解のあるなしが「決定できる」ことに由来します。
日本語の「行列式」は、(正方)行列の成分を使って作った式、くらいの意味でしょうか。

この行列式は、面白い性質をいろいろ持っているというのが、最初に学ぶべきことです。
諸々のことを考えて、ここでは、列についての性質にまず注目します。(行については後ほど。)
(i) 線型性と (ii) 交代性です。
2次行列式の段階でこれをしっかりと認識します。

これを土台に、3変数の連立一次方程式を解いて3次行列式を導入し、線型性と交代性を確かめます。
その後、連立一次方程式は取り敢えず置いておいて、4次の行列式を1行に関する展開式の形で導入し、 同じく線型性と交代性を確かめます。

ここまでくれば、一般の場合の行列式の定義とその性質が見えてくるはずで、 正式な帰納法とか言わずとも、自由に使い計算練習すべきです。
そのためにはもう一つ、縦と横を入れ替えた性質と特定の行あるいは列に関する展開式も押さえておきましょう。 定理5.2と系5.3のところです。 (これの根拠については、次回に改めて学びます。) 関連して、縦横を入れ替える「転置」という操作を知っておきます。これは一般の長方形行列で意味がありますが、 行列式が関係するのは正方行列の場合で、そのときは対角線に関する折り返しになっています。

具体的な計算方法については、例えば MIT 18.06SC Linear Algebra をご覧ください。他にも determinant とか行列式で検索すればいろいろ見つかります。 「これだけ」の例3.3とか。
問題は自分で作ることもできます。とりあえず好きな9個の数字を正方形に並べてその行列式を計算します。
答えが合っているかどうか気になると思いますが、検算は、計算方法($0$を作る場所)を変えて計算します。 一致していればOkですが、一致しない場合は、計算方法を正しく理解していないおそれがあります。計算のプロセスをひとつひとつ確認していきます。 これは、面倒でもそうすべきです。この自分の間違いを自分で見つける、というのは極めて重要なことで、この経験が十分でない人には大事な仕事は任せられません。 いくら処理能力が高くてもです。その経験値を上げるせっかくの機会を無駄にしていけません。

Q: 講義ノートの21ページに書いてある「線形性」についてどうしても理解しきれない。
A: 今の場合、ベクトルに依存して決まる量が、ベクトルを定数倍するとその決まる量も定数倍され、 ベクトルが2つのベクトルの和で書かれているとき、それから決まる量も和に分かれる、という性質を 広く線型性といいます。
工学方面では、線型応答という言い方もします。
数学的には一次式で表されるという性質です。
ベクトルの内積で説明すると、 \[ (\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b})\cdot \overrightarrow{c} = \overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{c} + \overrightarrow{b}\cdot \overrightarrow{c}, \quad (\lambda \overrightarrow{a})\cdot \overrightarrow{c} = \lambda(\overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{c}) \] といった性質です。
内積の場合、右側のベクトルについても線型性が成り立つので、ある種の「分配法則」とも言えます。
行列式の場合には、これがどの列ベクトル(あるいは行ベクトル)についても成り立つということです。 (多重線型性といいます。)

Q: 22ページ上段に、「解の公式は~のようになる」とありますが、そう定義したということでしょうか。
A: 解の公式は定義ではありません。導くものです。テキストには導いた結果が書いてあります。 上の方でも説明したように、自ら確かめます。他を探したり、覚えるのはご法度です。 ブラックボックスで、取り敢えず答えが出ればいいや、というのは極めて危険です。

問5.4に関連した補足を書いておきます。
座標平面内の三点 $P_i(a_i,b_i)$ ($i=1,,2,3$) について、 $P_1$, $P_2$, $P_3$ が同一直線上にあることと \[ \begin{vmatrix} a_1 & b_1 & 1\\ a_2 & b_2 & 1\\ a_3 & b_3 & 1 \end{vmatrix} = 0 \] が同値になります。というのは、 \[ \begin{vmatrix} a_1 & b_1 & 1\\ a_2 & b_2 & 1\\ a_3 & b_3 & 1 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} a_1 & b_1 & 1\\ a_2-a_1 & b_2-b_1 & 0\\ a_3-a_1 & b_3-b_1 & 0 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} a_2-a_1 & b_2-b_1\\ a_3-a_1 & b_3-b_1 \end{vmatrix} = (a_2-a_1)(b_3-b_1) - (a_3-a_1)(b_2-b_1) \] という表示から、左辺の行列式が $0$ となることと、 ベクトル$\overrightarrow{P_2P_1}$ とベクトル $\overrightarrow{P_3P_1}$ が平行であることが同値になるから。
$0$ 成分が現れる際の場合分けを無視すれば、 直線$P_2P_1$ の傾き= $(b_2-b_1)/(a_2-a_1) = (b_3 - b_1)/(a_3-a_1)$ =直線 $P_3P_1$ の傾き、ということです。

行列式の計算練習で AI に尋ねるときは、
行列式 [1 2 3 4] [12 13 14 5] [11 16 15 6] [10 9 8 7] の計算
とでも書けば、掃き出し計算をしてくれます。解答の書き方の参考にもなります。

行列式の特徴付け(6/4)

季節はうつろいて、桶狭間。ここにも触らぬ神の夾竹桃。

先週は、行列式の導入から計算方法まで一気に進みました。 今日は行列式に関する性質の確認を行います。
まず、行列式の帰納的定義と性質を復習します。
列ベクトルに関する線型性と交代性(と規格化条件)、あと一行に関する展開式(帰納的定義式)です。
次に縦横を入れ替える転置の操作と行列の積の関係をチェックします。 行ベクトルについての性質と転置を取っても行列式の値が変化しないこと、積の行列式が積になること、 それと勝手な行あるいは列についての展開式が成り立つことを認識します。
次に、これら諸性質が成り立つ理由について考えてみます。 ポイントは列ベクトルについての性質が行列式を完全に決定すること。 そのために、並べ替え(置換ともいう)の符号を導入し、 行列式の完全展開式をまず導きます。
テキストでは一般のサイズの場合を書きましたが、2次あるいは3次の場合をまずは確かめてみます。問6.1。
次に、この特徴付けを利用して、行列式の行についての性質を証明していきます。 ここでも一般のサイズではなく2次あるいは3次の場合を確かめます。
一般のサイズについての確認は、余裕があればで結構です。
並べ替えが2つの入れ替えをくり返すことで実現できること(あみだくじの仕組み)も確かめておきましょう。問6.2。

多くの教科書では、完全展開式が行列式の定義として採用されています。 テキストのように帰納的に定義するのは少数派なのですが、発見の経緯を追体験することは、意味のあることです。
なお、完全展開式が流行る理由は、置換の符号というものと一気に展開式を書き下すやり方が数学者好みであるためでしょうか。
どちらから始めても結局は同じものにたどり着くのですが、帰納的方法と演繹的方法が可能な場合は、 かりに手間がかかろうとも帰納的方法を普通の人には薦めます。経験から理屈へということで。

今日はここまでにしておきますが、命題6.7は後で必要になるかも知れません。結果だけでも目を通しておきます。

Q: 定理6.3で、行列でいう関数というもの $f(a_1,a_2,\dots,a_n)$ の意味が何度か考えてみたのですがわかりません。 例えば、$f=2A$($A$は行列)のようなものとして考えればいいのでしょうか?できたら定理6.3.の簡単な例を教えていただきたいです。
A: 行列の $n^2$ 個の成分、同じことですが列ベクトルに現れるすべての成分を使った式(この場合は多項式)という意味です。
簡単な例ということであれば、2次か3次の正方行列です。2次の場合並替えがもとのままも含めて2つしかないので、 感じがつかめないかも知れません。3次の並べ替えは6通りあるので、それのどれでも良いので、 定理6.3の左辺と右辺を書いてみて比較するというのが一つの方法です。それぞれに、展開項が $3\times 3\times 3=27$ 通りでてきて、 そのうち、並べ替え以外の $27-6 = 21$ 項は交代性により零になります。 是非書いてみてください。2次の場合の計算だと簡単すぎますが、規則を確かめておきます。

Q: 基本ベクトルというものは1つの列に対して1がどこか1つある列ベクトルという定義でよろしいでしょうか?
A: はい、正確にはどこか一箇所だけ $1$ で残りが $0$ という成分をもつベクトルです。

Q: 系6.4のΣ記号の下にσがついてる記号(完全展開について)が出てくると意味がつかめなくなってくるのですが、 これはどのようなものなのでしょうか?
A: これについてはテキスト p.12 の下の方をご覧いただきたいと思います。
そこの脚注に書いてある通り、私も初めて接したときは茫然としたものでした。 $\sum_\sigma$ の意味は、考えられる並べかえすべてについて和を取るというもので、 この場合、並替えの方法は順列の数だけあるので、$n!$ だけの項の和が現れます。
順番に加える(高校までの和がそうだったと思いますが)という意識が強すぎると、この記号の正しい意味・使い方の妨げとなります。
条件を満たすもの全てを加える(加える順番は気にしない)というのが、本来の $\sum$ 記号の使い方です。
例えば $\sum_{1\leq k \leq 50, ただしk は素数}$ と書けば、 $k=2,3,5,7,11,13,17,19,23,29,31,37,41,43,47$ に対応する項だけを足し上げるといった具合。

来週は、名大祭の準備ということで、授業はありませんが、行列式の全体を復習するチャンスでもあります。

前回の宿題ですが、gemini とか chatgpt に
3点 (a_1,b_1), (a_2,b_2), (a_3,b_3) を通る円の方程式を行列式を使って表わし、理由を述べよ
と聞いてみてください。概ね満足のいく答えが返ってくると思います。3点が同一直線上にある場合(先週の日誌参照)の処理があるかどうか。 推論部分が多くなると怪しくなります。有料版だとそれが良くなるはずですが、はてさて。

Vandermonde determinant については、ネット上でも多くの情報があり、差積であることの証明は、因数定理を使うか帰納法を使うかに分かれますが、 帰納法による証明について、ここで補足しておきます。
まず、帰納法というのは、簡単な場合から一般性のある仕組みを見出すというのが基本です。いきなり証明を書けばよいというものではありません。
ということで、$n=2,3$ でどうなっているか、まず調べるべきです。$n=3$ だと、$c-a$, $c-b$ が出てくるように素直に計算すると、 \[ \begin{vmatrix} 1 & a & a^2\\ 1 & b & b^2\\ 1 & c & c^2 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} 0 & a-c & a^2-c^2\\ 0 & b-c & b^2-c^2\\ 1 & c & c^2 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} a-c & a^2-c^2\\ b-c & b^2-c^2 \end{vmatrix} = (c-a)(c-b) \begin{vmatrix} 1 & a+c\\ 1 & b+c \end{vmatrix} = (c-a)(c-b) \begin{vmatrix} 1 & a\\ 1 & b \end{vmatrix} = (c-a)(c-b)(b-a). \] 仕組みを把握するために $n=4$ も書いてみます。 \[ \begin{vmatrix} 1 & a & a^2 & a^3\\ 1 & b & b^2 & b^3\\ 1 & c & c^2 & c^3\\ 1 & d & d^2 & d^3 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} 0 & a-d & a^2-d^2 & a^3 - d^3\\ 0 & b-d & b^2-d^2 & b^3-d^3\\ 0 & c-d & c^2-d^2 & c^3-d^3\\ 1 & d & d^2 & d^3 \end{vmatrix} = - \begin{vmatrix} a-d & a^2-d^2 & a^3-d^3\\ b-d & b^2-d^2 & b^3-d^3\\ c-d & c^2-d^3 & c^3-d^3 \end{vmatrix} = (d-a)(d-b)(d-c) \begin{vmatrix} 1 & a+d & a^2 + ad + d^2\\ 1 & b+d & b^2 + bd + d^2\\ 1 & c+d & c^2 + cd + d^2 \end{vmatrix} = (d-a)(d-b)(d-c) \begin{vmatrix} 1 & a & a^2 + ad\\ 1 & b & b^2 + bd\\ 1 & c & c^2 + cd \end{vmatrix} = (d-a)(d-b)(d-c) \begin{vmatrix} 1 & a & a^2\\ 1 & b & b^2\\ 1 & c & c^2 \end{vmatrix} = (d-a)(d-b)(d-c)(c-a)(c-b)(b-a). \] 仕組みが見えましたか。まだでしたら、$n=5$ も計算してみます。そうして、帰納法にまとめ上げます。
行列式の書き直しとしては、1行で右から $0$ を増やし、$b-a$, $c-a$, $d-a$ をくくり出すという方針で、 \[ \begin{vmatrix} 1 & a & a^2 & a^3\\ 1 & b & b^2 & b^3\\ 1 & c & c^2 & c^3\\ 1 & d & d^2 & d^3 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} 1 & a & a^2 & 0\\ 1 & b & b^2 & b^3-ab^2\\ 1 & c & c^2 & c^3-ac^2\\ 1 & d & d^2 & d^3-ad^2 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} 1 & a & 0 & 0\\ 1 & b & b^2-ab & b^3-ab^2\\ 1 & c & c^2-ac & c^3-ac^2\\ 1 & d & d^2-ad & d^3-ad^2 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} 1 & 0 & 0 & 0\\ 1 & b-a & b^2-ab & b^3-ab^2\\ 1 & c-a & c^2-ac & c^3-ac^2\\ 1 & d-a & d^2-ad & d^3-ad^2 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} b-a & b^2-ab & b^3-ab^2\\ c-a & c^2-ac & c^3-ac^2\\ d-a & d^2-ad & d^3-ad^2 \end{vmatrix} = (b-a)(c-a)(d-a) \begin{vmatrix} 1 & b & b^2\\ 1 & c & d^2\\ 1 & d & d^2 \end{vmatrix} \] のように計算するのも一法。これが一番楽かも知れません。

どうも生成AIはこの試行錯誤のプロセスを説明することがうまくないようです。というか、プロセスを black box 化しての処理が本質なのかも知れません。

行列式あれこれ(6/18)

梅雨の中休みか、桶狭間。刈谷のすいかに安城のとうもろこし。 今に残るガクアジサイ。

まずは前回の復習として、転置行列と関連する行列式の性質。転置と積の関係は、基本的な内積型を使って視覚的に。 テキストのように代数的(形式的)な方法でも、お好みで。
もう一つ、行列の積と行列式の関係。

今日は、行列式の3回目、前2回で遅れを取った人は取り戻す機会でもあります。来週の試験に備えて。
理屈よりも形から、それも具体的なものからです。手を動かし、計算方法を身につけます。
2次・3次、そして4次まで稽古します。2次は覚えます。3次も覚えようとする人がいるでしょうが、 勧めません。覚えてしまっては、行列式の計算規則を練習するせっかくの機会を失うからです。
4次以上に使えるのは、この行列式の性質に基づく計算でもあり、次のテーマである掃き出し法にも繋がります。

もう一つ重要な話題が、行列式の幾何学的意味です。
これについては、2次・3次の場合を知っていただきます。3次元のベクトル積もついでにどうぞ。
微積分の方で、重積分の変数変換を行う際にも必要になります。
この幾何学的意味から、次のようなことが直感的に理解できるようになります。 \[ \det(\overrightarrow{a},\overrightarrow{b},\overrightarrow{c}) = 0 \iff \text{ベクトル $\overrightarrow{a}$, $\overrightarrow{b}$, $\overrightarrow{c}$ が同一平面上にある。} \]
例6.8と問6.9、問6.10で練習します。余裕があれば、ベクトル積の問題もどうぞ。
ビデオを探して見たところ、計算練習は沢山見つかるものの、 行列式の性質と図形の移動を結びつけた説明がなかなかでてこない。
(テキストには、そういった何処にでも書いてありそうで、 しかし何処にも書いていない長年のあれこれが詰まっているのだが、まあ見えぬとしたものである。 「本当に大切なものは目には見えない」という。)
他に外積 (exterior product) というのもあり、用語が混線気味。こちらは $n$ 次元でも意味をもつものであるため、 あまりにも3次元にコミットしたものは、本質から目をそらすことになるので避けたい気分。
Determinants and VolumeDeterminant

余裕があったら、並べ替えの符号を使って、15パズルの問題を考えてみてください。
こちらは、ぴったり(?)の解説ビデオが Linear Algebra 108, 15 Puzzle にありました。

次回は行列式のまとめ(前半)と試験3(後半)です。とくに授業とここでで説明したことを中心に復習しておいてください。

質問があったわけではなのですが、幾何学的意味の解説ビデオが見当たらない件について、追記しておきます。 線型代数のビデオとしては、 MIT のStrang先生がとても有名ですが、行列式の幾何学的意味が出てくるのは、 Lecture 20: Cramer rule, inverse matrix, and volume の後半部分です。
ただ、説明が明快かと言えば、濁った印象をもちます。行列式の絶対値が体積だ、というのはその通りですが、 行列式との関係で言えば、テキスト「行列あれこれ」にあるように、行列式が符号つき体積を表わす、というのが適切かと思います。
右手系・左手系もついでに学べますし、符号も込みで処理した方が良いでしょう。
2次の行列式が平行四辺形の面積であることの理由として、行列式の性質と同じものが平行四辺形の面積でも成り立つことを、 ビデオでは挙げかけたようですが、このことは手書きの図だと苦しく、かつ正しい線形性は符号付きでないと成り立たない、 ということもあり、賢明にも途中で止めたように見えるのですが、どうでしょうか。
一流 (top level) を知ることは良いことです。素直に感動できるかも知れないし、時には、 何だこの程度なら自分にもできる、という自信(慢心?)にもつながるので。 そのためには、普段から自分の頭で(人の言うことではなく)あれこれ悩みやってみることが・・・。

Q: 18ページの中段に3次行列を~で定義すると書いてあるのですがなぜそうなるのでしょうか。 また、その次の行の「そうすると、上で求めた解の公式は~のようになる」というのもなぜそうなるのか分かりません。
A: 少し前の内容ですが、ここで答えておきます。
行列式を導入する際の理由付けとして、連立一次方程式の解の公式をここでは利用しています。
ただ、解の公式が多項式/多項式の形なので、分子分母の取り方に不定性があるのですが、 とりあえず定数の違いは置いておいて、分母に相当する式を3次行列式の定義としたのが、質問の箇所です。
なぜ、そうなるというよりも、そのように定めるのがもっともらしいと、ここでは理解します。
数学といえども全てが必然ということはまったくなく、取り敢えずこうしてみようかというのが多々あります。
結果的に、符号その他諸々の整合性からテキストで与えたものが具合が良く、今日でいうところの行列式と合致しております。
後半部分は、一旦、3次行列式をこのように定めると、解の公式の分子の部分が再び行列式の形になっていることを、 「これこれのようになる」と書きました。
もう少し具体的に言えば、分母の行列式で、 $\overrightarrow{a}$ の部分を $\overrightarrow{t}$に置き換えた式を書き下してみてください。
そうすると、丁度、右辺(分子の部分)の式が出てきます。
もう一息の感じがしますので、引き続き、あれこれ試行錯誤して見られますよう。
こういったことが自分で解きほぐせるようになると、一段階高いレベルに達します。是非。

Q: 授業で連立一次方程式の説明がありましたが、試験3の範囲に連立一次方程式は含まれますか?
A: クラメールの公式のことでしたら、試験で問うことはありません。

Q: 講義ノートは何ページから何ページまで復習すればよろしいでしょうか。
A: 行列式(4から6)p.21--p.34 のうち、授業(とくに 5/28 と 6/18 の)で触れたところを重点的に復習します。

まとめと試験3(6/25)

梅雨も盛りにアガパンサスの花。

今日は、3回目のまとめ(補足)と試験でした。

[試験の講評] やさしい問題で満点続出と思いきやで、かなり深刻な人もちらほらと。
$\fbox{1}$ は計算主体の問題なので、2点か0点です。ただし、おしい計算ミスの場合は、1点。 教えてもいない「サラス」を使うもの多し、そして間違うものもまた多し。「サラス」は「ロピタル」と同様、まったくお勧めしません。 説明がわかりやすく書いているものは追加点。 線型性よりとか交代性より、といった手抜きの説明も目立ちました。 「i行のk倍をj行に加えると」といった書き方をすべきです。
$\fbox{2}$ は直前に復習したので、点数はまあまあでしたが、符号の違いを書かないのがほとんどで、 もっと深刻なのは、直方体の体積を行列式で計算する、といった馬鹿げた問題を書く人が目に付きました。期末試験で再度問うことになるでしょうか。
6---2人、5---8人、4---27人、3---22人、2---5人、1---2人、0---1人

連立一次方程式(6/27)

梅雨に台風、これも尋常ならざるか、ねむの木の小さな花火。
27日11時時点で警報が出ているときも、休講とせずに安全な場所からここにアクセスして自習していただきます。 私のネット環境が良くないので、 質問等をメールで受付け、回答をここに追記する形ですすめていく予定です。
教務からの連絡にもご注意ください。27日12時ごろに、最新情報をここに書き入れます。
警報レベルにはなっていないので、対面授業を 14:45 から行います。(2026/2/27 12:00 現在) なお自習される場合は、講義ノートの最新版をお使いください。掃き出し計算の例を追加してあります。

今日から最後の山である連立一次方程式です。
加減法を系統立てた掃き出し法を3回にわけて学びます。
最初は、何だこんなものと思われるかも知れませんが(実際、昔、そう思いました)、これが強力極まりなく、 行列代数の多くの結果がこれから導かれます。
できるだけ多くの具体例で経験を積んでください。 頭だけでわかった気になってはいけません。

多少の慣れは必要であっても、時間をかければ確実にマスターできますし、マスターしていただかないとこの先々、 困ったことになります。
具体的な手順に不安があったら、例えば この動画でも見てください。他にも似たようなものが沢山見つかります。

掃き出し定理(7/2)

梅雨も後半か、かしわばに気の早いセミの声。

先週に続き、掃き出し法です。
今この瞬間もものすごい数の掃き出し計算がコンピュータにより行われ、社会の下支えをしています。
その仕組みを実感し、実体を理解するのが目標。
復習も兼ねて横長の行列を使って是非もう一度。 なお掃き出し変形を表わす際に、行列を等号で結ぶ人がいますが、これはいけません。別の記号、$\rightarrow$ とか $\sim$ を使います。
掃き出し計算で得られる一次結合の対象になる解ベクトルは、独立な方向を向いていることを認識。 一次独立という言い方を理解します。問7.5、問7.6。
ついでに、ベクトルの集団が「一次独立」あるいは「一次従属」の意味を、幾何学的な直感と併せて理解します。
3つのベクトルでしたら、同一平面上にないということで、3次元的な関係にあるということ。
これが、4つ以上でも意味を持つということ。一次独立性の代数的表現は、そういう内容になっています。
ということで、問7.7。

以上の具体的な計算に潜む理論的ないくつかの性質を抽出したのが、補題7.7であり、掃き出し定理7.8です。
どういう感覚の内容であるかを、自分なりの理解でよいので考えてみます。
証明は、その理解するための手がかりとなりますが、証明をなぞるだけでは不十分です。 背後にある心が見えるとよいのですが、一度だけでは難しいとは思います。二度・三度へ向けての第一歩と考えます。

最後に、定数項がある場合の方程式も解いて終了です。

Q: 例7.6の3行目から7行目の内容がよく理解できませんでした。 $t$と$v$ベクトルを掛け合わせたものが解を表すということでしょうか。
A: はい、解を表わすということです。

Q: d=n-rank(A)というのが何故そうなるのかを教えてください。
A: これは階段行列の段に該当する成分(変数)が $r$ 個あり、 残りの $d = n - r$ 個の変数がパラメータとして取れることによります。
もともとあった $n$ 個の変数のうち、$r$ 個の変数について連立一次方程式を解くことが出来て、残りの $n-r$ 個の 変数は勝手に選べるのでパラメータとして文字のまま残す、ということです。
Q: 合計12点以上合格ということでしたが、毎回の試験の最高点は6点になっているため、それに応じて12点も引き上げられるのでしょうか。
A: 引き上げられません。6点というのは、システムの都合上、そうしておかないとボーナス点を入力できないためです。 合否の基準は変わりませんが、ボーナス点の存在により、合格の細分グレードは影響を受けます。具体的には、20点とっても最上グレードにならない可能性があります。 ご注意ください。

補題7.8についての質問に基づき、講義ノートを手直ししましたので、新しいものをご覧ください。

宿題について
3次正方行列の階段行列のパターンを google に掛けると、AI による概要だと不十分な答えが表示される一方、AIモードだと、完全な答えが示されます。 ご確認ください。
行列 [a d f] [0 b e] [0 0 c] のランクが3であるための条件を掃き出し法で求めよ。 で完璧な答えが返ってきます。なお、「掃き出し法で」という条件をつけないと行列式を使った解答が表示されます。こちらは、次回の逆行列がらみの結果を使ったものになります。
どうも、条件(情報)をうまく書いてあげるのが AI を使う際のコツのようで、そのためにも、形式的な内容ではなく、心の部分の理解が必要かと。 機械的に暗記して処理するだけ、というのはこれからの時代は考えものかと。暗記するにしても心がこもってないと。

逆行列と基底(7/9)

前線と台風の引き合いに、蓮の花はタルチョを見上げるか。

今日は、いよいよ「行列代数の基本定理」です。
行列式と「掃き出し定理」が、逆行列を接点に一つにまとまります。

ということで、8節(p.43--p.46)をご覧ください。
まずは逆行列が何かを認識します。逆行列がわかれば連立一次方程式が即座に解けますが、 逆にいうと、逆行列を求めるということは連立一次方程式を解くということでもあります。
次に、逆行列の計算規則に注目します。行列の積は交換法則が成り立たず、 それが逆行列の関係式にも反映されます。
ついでに(正方)行列のべきの復習をして、逆行列をつかった負べきとその指数法則も確認します。
逆行列の実際の計算は掃き出し法を使いますが、 掃き出し計算の仕組みと関連した特殊な逆行列(基本行列)にも慣れていただきます。
次に、逆行列と行列式の関係を学びます。
逆行列があれば行列式の値は $0$ になりません。
行列式の値が $0$ になる行列というものはそれなりに沢山あるので、逆行列を持たない行列というのもいろいろある ことになります。
実は、行列の掃き出し計算を使って逆行列の有無を調べると、 逆行列をもつことと行列式の値が $0$ でないことが同値であるとわかります。
他に関連した言い換えとして、一次独立性と階数によるものがあり、 以上をまとめたのが「行列代数の基本定理」となります。
最後に問8.4と問8.5で今日の仕上げとします。 (掃き出し法による逆行列の計算はしなくてよい。)

来週は、掃き出し法の補足と試験範囲の復習を行います。
試験ですが、掃き出し法と今日のところから2題、過去3回の範囲から2題です。

先週の宿題として、簡約階段行列の唯一性を解答した方がおられましたが、少しむずかしかったようなので、解説しておきます。
まず、階段行列の作り方にランクがよらないことに注意します。
列数についての帰納法では、ランクが $1$ 増える場合が易しく、ランクが変化しない場合、すなわち、自由変数が一つ増える場合の処理に工夫が必要になります。
そのためには、掃き出し変形で変わらない情報を利用します。
それについても色々考えられますが、ここでは、一般的な連立一次方程式の解法を利用します。 (列ベクトルの間の一次関係式の掃き出し不変性を使うことも可能。こちらは、逆行列の節で補足しておきます。)
解の存在と帰納法の仮定である簡約階段行列の一致を使うと、簡単な計算で、簡約階段行列の最終列が一つに決まることがわかります。
詳しくは、最新の講義ノート(宿題番号のズレに注意)の該当箇所をご覧ください。

まとめと演習(7/16)

梅雨前線も既に消え去り、サルスベリは紅を忘れず。

最初に、3次行列式の意味から、平面の方程式とその裏表の別が行列式の符号に反映されること。
射影とランク1の行列の関係。ランク1の行列の形と積の計算。二項定理がらみの問題。
掃き出し計算。解空間とその基底、次元。 その理解のためには、連立一次方程式の段変数と自由変数という考えが役に立つでしょう。 段変数の数が係数行列のランクで、自由変数の数が解空間の次元になります。
最後に、逆行列の計算の仕組みに関連して逆行列を基本行列の積で表わせるという事実。
行列式の計算と掃き出し計算の似ているところ、違うところ。
ということで、行列式の計算方法も復習しておきます。 掃き出し計算との類似と違いもふくめて。

次回7月23日は期末試験。時間は80分程、問題の数もこれまでの試験の倍、点数も倍。
おおまかに、過去3回の試験範囲から2題、新たな範囲から2題。

期末試験(7/23)

セミは元気に暑さ知らず。いよいよ炎暑の到来。

本日は、4回目の試験でした。

[講評] 予告通り過去3回の試験範囲から2題、掃き出し法から2題。
$\fbox{1}$、$\fbox{2}$ は先週の復習でも強調していた内容なので満点続出と思いきや、それなりの点数に。
$\fbox{3}$ は掃き出し計算とその確認だったのですが、掃き出し計算のできない人が結構な数に。 この問題は、計算を始める前に状況を観察すると、すでに階段行列が表示されているという、人の悪い問題ではあったが、 そのことを指摘するもの1−2人のみ。 ここは、前期の最重要項目なので、ぜひ復習を。
$\fbox{4}$ は基本行列の逆行列の積として計算して欲しかったのだが。 大多数は、教えてもいなかった逆行列の掃き出し計算を実行。さらには、授業で取り上げなかった adjugate matrix を使うものも少なからず。 まあ、勉強したということではあるが、鍛えるべきところをミスっているような。根性だけの計算では AI を使いこなせないように思うのだが。

得点分布です。
10---1人、9---7人、8---28人、7---14人、6---10人、5---4人、4---1人、3---3人
試験の点数を TACT へ反映させました。

それでは、はかなき夢を夏の月とともに。

Q: 試験は20点満点ということなので、18点は100点換算だと90点になるのですが、A 評価ではなくB評価でした。その理由を教えてください。
A: まず、名古屋大学の成績ルール にあるように、パーセント表示はあくまでも例示であり、個々の授業を縛る絶対基準ではありません。
ご存知のように、0,1,2 の三段階評価の場合、2 は切り上げによりどうしても点数が実際よりも上になります。0 はその逆です。 これを多数回繰り返すと、上位の点数は実際よりも大きく、下位の点数は小さくなります。 一方、中間である5割前後は、それが相殺される結果、より信用できる数値となり、合格最低点である6割はそれが根拠になっています。
ということで、合格者の中のグレード評価は、ボーナス点も加味したものとなっており(このことは掃き出し定理の回にも書いてあります)、たとえ合計点が18点でも A にはならないのでした。
4回の試験の合計点の最高は24点でした。参考までに。


上界へ