ネット上の参考書など
今期は、予習+講義+復習の「半転授業」を志向します。
予復習は参考資料(続行列代数)と講義ノートで教室の外にて。
実講義(40分+40分)は事前学習を前提に、考え方・計算のコツなどを伝える予定です。
ようやく、天候も落ち着きつつあるようですが、過去の統計とかけ離れたことがこれからも起こり続けることでしょう。 しようがない、で片付けないこと。天の流れも世の動きも。
前期は、行列と行列式にまつわる計算が主な内容でした。その全体を統制する技に、連立一次方程式の掃き出しによる解法があります。
まず、掃き出し法の内容を復習していただきます。
テキストで言えば、7節になります。斉次型の連立一次方程式の解法がとりわけ重要で、
その解集合(解空間)の性質(掃き出し定理)を思い出しておきます。
次いで、正方行列と掃き出し定理、それと逆行列の関係をまとめたもの(行列代数の基本定理)も再確認しておきます。
次の3つのものが何であって、それがどのように関係するか。
\[
A^{-1},\quad \hbox{rank}(A),\quad \det(A)
\]
今後の見通し、というと大げさですが、それが味わえる話題を少し。
行列のべきと指数法則の復習。
行列のべきを調べる際に基本となる特別な数と特別なベクトルについて。
等比数列の極限の様子から、行列のべきの様子が見えてくるということ。
ここで、ベクトルといった場合の最も基本的な性質として、一次結合が可能であること。
これの具体的な応用として、連立微分方程式の解の求め方について。
具体例として
\[
\frac{dx}{dt} = x +y,\quad
\frac{dy}{dt} = 2x
\]
の解き方。解を並べたもの $(x(t),y(t))$ が「ベクトル」の性質をもつこと。
これを解く工夫として、
\[
\frac{d}{dt} (\alpha x + \beta y) = \lambda (\alpha x + \beta y)
\]
という形の解の組み合わせを考えるとうまく行くということ。
ただし、$\lambda$ は実数とは限らない。
ということで、複素数を許した行列代数が必要になります。
次回以降は、主に続行列代数にしたがって進めていきます。そこにある問が宿題ということになります。
なお、宿題は自主的に行っていただき、提出等は求めません。解答も AI が教えてくれるはずです。
質問等があれば、メールでどうぞ。
気温高めもしばらくは穏やかな日々のありがたさ。
本日は、先週説明した「技」のところで出会った、そして前期の最後にふれてもよかった、固有値・固有ベクトルからです。
それを調べるための道具としての固有多項式とその実例。
応用としては、連立漸化式。
要約の問(これが宿題です)は、必ずやっておくこと。
余裕があれば、テキストで#記号がついている問(今回であれば 10.3, 10.4)もどうぞ。
今期は、宿題の提出はありません。答えが必要でしたら、AI にでもお尋ねください。またメールでの質問も受け付けます。
テキストで固有値と固有ベクトルの英語が反対になっているのでは、という質問を受けました。
これは、「固有値 $\lambda$ の固有ベクトル」という言い方のせいで、どこまでが一つの語句かわかりにくかったためでした。
紛れのないように修正したものを上げておきましたので、ご参照ください。
来週は、少し枝道にそれて複素数の数学です。要約(続行列代数)からの予習を、ぜひ。
複素数は、理由はわかりませんが、量子現象の記述に欠かせないということもあり、計算練習も含めて できるだけ馴染んでおくと幸せになれます。
天気は周期的に、気温もそれなりに虫の声。
本日のメニュー:
複素数の極表示、オイラーの公式、固有値の存在。
複素数とはこれを機会に仲良くしておくとよい。
高校の内容の復習も含めて。
振動現象の記述にも役立つのみならず、自然はこの複素数の形で我々に姿を見せる、
というのは量子力学の教えるところ。それが何を意味するかは今に続く最大のミステリーでもある。
ということで、まずは、complex2023.pdf の2節「複素数の幾何学」の内容を「要約」(laa2024.pdf) に従って見ていきます。
最初に、高校で学んだ内容の復習をします。
まずは、複素共役(共役複素数)が実軸に関する折り返しであることを確認し、
複素数の実部と虚部が複素共役を使って表わされることを思い起こします。
次に複素数の極(座標)表示について復習します。絶対値と偏角の幾何学的意味を確かめます。
複素数の積において、絶対値は積で偏角は和で表わされることが重要です。
\[
|zw| = |z| |w|, \quad
\arg(zw) = \arg(z) + \arg(w)
\]
偏角の式は、対数を思い出させるものになっていて、実際、この2つは密接に関係します。
そのことを端的に表わすのがオイラーの公式(表示式)と呼ばれるもので、
\[
e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta
\]
と書かれます。左辺に表れる虚数の指数関数を、右辺に表れる極表示により定めると、ここでは理解しておきます。言い換えると、
\[
\arg e^{i\theta} = \theta
\]
ということ。
この書き方がもっともらしいことは、$\theta=0$ のとき、左辺は $e^0$ で右辺の $1$ と一致します。
さらに、右辺を $\theta$ で微分すると、
$i(\cos\theta + i\sin\theta)$ となる一方で、左辺を形式的に微分すると、やはり $i$ が掛けられて辻褄があっているように見えます。
また $z$ の偏角を $\theta$、$w$ の偏角を $\varphi$ とすると、
\[
z = |z| e^{i\theta}, \quad
w = |w| e^{i\varphi}
\]
と表わされるので、積 $zw$ の偏角が $\theta + \varphi$ となることから、
\[
|z|e^{i\theta} |w| e^{i\varphi} = |z||w| e^{i(\theta + \varphi)}
\]
と計算できます。すなわち
\[
e^{i(\theta + \varphi)} = e^{i\theta} e^{i\varphi}
\]
という複素数の指数法則が成り立ちます。これを極表示で書き表わした
\[
\cos(\theta+\varphi) + i \sin(\theta + \varphi) = (\cos\theta + i \sin\theta)(\cos\varphi + i\sin\varphi)
\]
の右辺の積を実際に計算してみると、三角関数の加法定理そのものであることがわかります。
次に、$\theta$ を変化させたとき $e^{i\theta}$ が複素平面上で動く様子を見ましょう。$e^{i\theta}$ の座標表示が、 \[ x = \cos\theta, \quad y = \sin \theta \] であることから、$e^{i\theta}$ は絶対値が $1$ の複素数を偏角が $\theta$ となるように動きます。 ということで、周期が $2\pi$ の周期運動(円運動)を表わします。
一般に、複素数 $z = x + iy$ の指数関数 $e^z$ を \[ e^z = e^x e^{iy} = e^x(\cos y + i \sin y) \] で定めると、複素指数法則 $e^z e^w = e^{z+w}$ が成り立ちます。これは、複素数の積の極表示の言い換えになっているます。 また、$\overline{e^z} = e^{\overline{z}}$ および $|e^z| = e^x$ にも注意。
複素指数関数は、複素数の幾何学的性質を読み取るのに便利ですが、方程式を解く上でも威力を発揮します。
例えば、与えられた複素数 $c = a + ib$ に対して、$z^2 = c$ となる複素数があることは明らかではありません。$z = x+iy$ と置くと、
$x$, $y$ についての連立方程式
\[
x^2 - y^2 = a,\quad 2xy = b
\]
の実数解の有無が問題になります。
今の場合は、連立方程式といっても簡単な形なので、素直に調べても解の存在と形を示せますが、それは計算してみないとわからない。
もっと見える方法は、$c$ を $|c| e^{i\varphi}$ と極表示し、$z$ の極表示 $r e^{i\theta}$ を使って
\[
r^2 e^{i2\theta} = |c| e^{i\varphi}
\]
と書けば、$r = |c|^{1/2}$ および
\[
2\theta = \varphi + 2\pi k \iff \theta = \varphi/2 + \pi k
\quad
(k=0, \pm 1,\pm2,\dots)
\]
が解を与えることが即座にわかります。
同様の方法は $z^n = c$ でも使え、複素数の $n$ 乗根の存在と表示が得られます。
複素数の極表示は、具体的な計算のみならず、理論的なところでも威力を発揮して、
複素数を係数とする多項式が一次式の積で表わされるという結果も導きます。
こちらの方は、とりあえず結果を認めて、
一変数多項式を零とおいた方程式は、必ず複素数の解をもつという理解でよいでしょう。
行列代数としては、複素数を成分とする正方行列は、かならず複素数の固有値(と固有ベクトル)をもつ、という形で利用します。
最後に、laa2024.pdf を使って、固有値が複素数になる場合を具体的に経験していただきます。
ネットには、複素数についての動画もたくさん見つかりますが、極表示の周辺であれば
数学ビデオラボとか。
高校の内容を網羅的に復習するのであれば
ネット講座
とか。
これらをみると、今回の内容はほぼ高校数学にあるようで、そうであれば、オイラーの公式(の記号)とその使い方に慣れるだけで良さそうではあります。
動画ではありませんが、極表示の英語での解説
をひとつあげておきます。
質問:複素数、絶対値、偏角は英語で何というでしょうか。