ネット上の参考書など
今期は、予習+講義+復習の「半転授業」を志向します。
予復習は要約(続行列代数)と講義ノートで教室の外にて。
実講義(40分+40分)は事前学習を前提に、考え方・計算のコツなどを伝える予定です。
異常とも思える高温。これは最近の災害の多さと連動した人因というべく。おかしいと思うべきこと。 思うだけでは済まぬということ。
前期は、行列と行列式にまつわる計算が主な内容でした。その全体を統制する技に、連立一次方程式の掃き出しによる解法があります。
まず、掃き出し法の内容を復習していただきます。
テキストで言えば、7節になります。斉次型の連立一次方程式の解法がとりわけ重要で、
その解集合(解空間)の性質(掃き出し定理)を思い出しておきます。
次いで、正方行列と掃き出し定理、それと逆行列の関係をまとめたもの(行列代数の基本定理)も再確認しておきます。
次の3つのものが何であって、それがどのように関係するか。
\[
A^{-1},\quad \hbox{rank}(A),\quad \det(A)
\]
今後の見通し、というと大げさですが、それが味わえる話題を少し。
行列のべきと指数法則の復習。
行列のべきを調べる際に基本となる特別な数と特別なベクトルについて。
等比数列の極限の様子から、行列のべきの様子が見えてくるということ。
ここで、ベクトルといった場合の最も基本的な性質として、一次結合が可能であること。
これの具体的な応用として、連立微分方程式の解の求め方について。
具体例として
\[
\frac{dx}{dt} = x +y,\quad
\frac{dy}{dt} = 2x
\]
の解き方。解を並べたもの $(x(t),y(t))$ が「ベクトル」の性質をもつこと。
これを解く工夫として、
\[
\frac{d}{dt} (\alpha x + \beta y) = \lambda (\alpha x + \beta y)
\]
という形の解の組み合わせを考えるとうまく行くということ。
ただし、$\lambda$ は実数とは限らない。
ということで、複素数を許した行列代数が必要になります。
季節は急進し、彼岸花も頼りなげに。
本日は、先週説明した「技」のところで出会った、そして前期の最後にふれてもよかった、固有値・固有ベクトルからです。
それを調べるための道具としての固有多項式とその実例。
応用としては、連立漸化式。
要約の問は、必ずやっておくこと。
余裕があれば、テキストで#記号がついている問(今回であれば 10.3, 10.4)もどうぞ。
テキストで固有値と固有ベクトルの英語が反対になっているのでは、という質問を受けました。
これは、「固有値 $\lambda$ の固有ベクトル」という言い方のせいで、どこまでが一つの語句かわかりにくかったためでした。
紛れのないように修正したものを上げておきましたので、ご参照ください。
来週は、少し枝道にそれて、複素数の数学ですが、
教室での授業はなく、都合の良い時にここからたどれる資料(10月15日に提供予定)その他で学習していただきます。
「オンデマンド」というらしい。お化けでも出るような虚仮おどしでない身も蓋もない言い方だと、自習の時間。「半転」ならぬ「全転」授業。
質問等はメールでどうぞ。ただし、返答には多少時間がかかるかもしれません。
天気は周期的に、気温もそれなりに虫の声。
本日のメニュー:
複素数の極表示、オイラーの公式、固有値の存在。
複素数とはこれを機会に仲良くしておくとよい。
高校の内容の復習も含めて。
振動現象の記述にも役立つのみならず、自然はこの複素数の形で我々に姿を見せる、
というのは量子力学の教えるところ。それが何を意味するかは今に続く最大のミステリーでもある。
ということで、まずは、complex2023.pdf の2節「複素数の幾何学」の内容を「要約」(laa2024.pdf) に従って見ていきます。
最初に、高校で学んだ内容の復習をします。
まずは、複素共役(共役複素数)が実軸に関する折り返しであることを確認し、
複素数の実部と虚部が複素共役を使って表わされることを思い起こします。
次に複素数の極(座標)表示について復習します。絶対値と偏角の幾何学的意味を確かめます。
複素数の積において、絶対値は積で偏角は和で表わされることが重要です。
\[
|zw| = |z| |w|, \quad
\arg(zw) = \arg(z) + \arg(w)
\]
偏角の式は、対数を思い出させるものになっていて、実際、この2つは密接に関係します。
そのことを端的に表わすのがオイラーの公式(表示式)と呼ばれるもので、
\[
e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta
\]
と書かれます。左辺に表れる虚数の指数関数を、右辺に表れる極表示により定めると、ここでは理解しておきます。言い換えると、
\[
\arg e^{i\theta} = \theta
\]
ということ。$z$ の偏角を $\theta$、$w$ の偏角を $\varphi$ とすると、
\[
z = |z| e^{i\theta}, \quad
w = |w| e^{i\varphi}
\]
と表わされるので、積 $zw$ の偏角が $\theta + \varphi$ となることから、
\[
|z|e^{i\theta} |w| e^{i\varphi} = |z||w| e^{i(\theta + \varphi)}
\]
と計算できます。すなわち
\[
e^{i(\theta + \varphi)} = e^{i\theta} e^{i\varphi}
\]
という複素数の指数法則が成り立ちます。これを極表示で書き表わした
\[
\cos(\theta+\varphi) + i \sin(\theta + \varphi) = (\cos\theta + i \sin\theta)(\cos\varphi + i\sin\varphi)
\]
の右辺の積を実際に計算してみると、三角関数の加法定理そのものであることがわかります。
次に、$\theta$ を変化させたとき $e^{i\theta}$ の動く様子を見ましょう。$e^{i\theta}$ の座標表示が、 \[ x = \cos\theta, \quad y = \sin \theta \] であることから、$e^{i\theta}$ は絶対値が $1$ の複素数を偏角が $\theta$ となるように動きます。 ということで、周期が $2\pi$ の周期運動を表わします。
一般に、複素数 $z = x + iy$ の指数関数 $e^z$ を \[ e^z = e^x e^{iy} = e^x(\cos y + i \sin y) \] で定めると、複素指数法則 $e^z e^w = e^{z+w}$ が成り立ちます。これは、複素数の積の極表示の言い換えになっているます。 また、$\overline{e^z} = e^{\overline{z}}$ および $|e^z| = e^x$ にも注意。
複素指数関数は、複素数の幾何学的性質を読み取るのに便利ですが、方程式を解く上でも威力を発揮します。
例えば、与えられた複素数 $c = a + ib$ に対して、$z^2 = c$ となる複素数があることは明らかではありません。$z = x+iy$ と置くと、
$x$, $y$ についての連立方程式
\[
x^2 - y^2 = a,\quad 2xy = b
\]
の実数解の有無が問題になります。
今の場合は、連立方程式といっても簡単な形なので、素直に調べても解の存在と形を示せますが、それは計算してみないとわからない。
もっと見える方法は、$c$ を $|c| e^{i\varphi}$ と極表示し、$z$ の極表示 $r e^{i\theta}$ を使って
\[
r^2 e^{i2\theta} = |c| e^{i\varphi}
\]
と書けば、$r = |c|^{1/2}$ および
\[
2\theta = \varphi + 2\pi k \iff \theta = \varphi/2 + \pi k
\quad
(k=0, \pm 1,\pm2,\dots)
\]
が解を与えることが即座にわかります。
同様の方法は $z^n = c$ でも使え、複素数の $n$ 乗根の存在と表示が得られます。
複素数の極表示は、具体的な計算のみならず、理論的なところでも威力を発揮して、
複素数を係数とする多項式が一次式の積で表わされるという結果も導きます。
こちらの方は、とりあえず結果を認めて、
一変数多項式を零とおいた方程式は、必ず複素数の解をもつという理解でよいでしょう。
行列代数としては、複素数を成分とする正方行列は、かならず複素数の固有値(と固有ベクトル)をもつ、という形で利用します。
最後に、laa2024.pdf を使って、固有値が複素数になる場合を具体的に経験していただきます。
ネットには、複素数についての動画もたくさん見つかりますが、極表示の周辺であれば
数学ビデオラボとか。
高校の内容を網羅的に復習するのであれば
ネット講座
とか。
これらをみると、今回の内容はほぼ高校数学にあるようで、そうであれば、オイラーの公式(の記号)とその使い方に慣れるだけで良さそうではあります。
動画ではありませんが、極表示の英語での解説
をひとつあげておきます。
質問:複素数、絶対値、偏角は英語で何というでしょうか。
鈴鹿の山なみもゆるくけむって。
対角行列とべき、行列の対角化とべき、対角化と固有値・固有ベクトル、基底と逆行列の復習
2次行列の例をいくつか。テキストにあるバネの連成振動については各自で研究してみてください。
来週は、まとめと試験(40分二問)。2回目と4回目(今日)を重点的に復習しておいてください。
open text というのを見つけたので URL を出しておきます。 Nicholson 典型的な米国の教科書のようで、計算ドリルとして使えるかも知れません。
秋は一歩前へ。白御岳もようやく。
今日は、復習と補習(固有値・固有ベクトル、行列の対角化、まとめて計算する方法)の後に 1回目の試験でした。
[講評]:一部不勉強な人もいましたが、全体としてはまずまずでしょうか。
$\fbox{1}$ (i) 解の公式に機械的に当てはめて間違う人多し。具体的には、次のようなことです。二次方程式
\[
(t-1)^2 +1 = 0
\]
を解くのに、一旦展開して
\[
t^2 - 2t +2 = 0
\]
として、機械的に解の公式に当てはめて
\[
t = 1 \pm \sqrt{1^2 - 2} = 1 \pm i
\]
とするのは、無駄なだけでなく大事なことを見落としかねないということです。
すでに、解ける形をしているので、$(t-1)^2 = -1$ から、$t-1 = \pm i$ とするのが、状況に即した対応というべきで、
そういったことに頓着しない行いを漫然と続けていては、せっかくの発見のチャンスをものにできないとしたもの。
(ii) ができない人がちらほら。
(iii) では $A$ の対角化を求めて、余計な計算に走るもの極めて多し。
$\fbox{2}$ 対角化を与える行列を $P$ と書くものも多し。
丸覚えと型にはめた計算だけでは、最近の AI にも劣ることになり、世界で繰り広げられている競争に対応できないとしたもの。
もっとも、競争原理だけというのも困ったものではあるが。
高温は続くもようやく雪のたより。異常なることは、異常なことを異常とも思わぬ理性の陰り。
本日のメニュー:
内積の復習からはじまって、様々な実例、そして内積の不等式。
具体的なベクトルと抽象的なベクトル。
ちょっとした応用として、データ解析の基本事項でもある、平均、分散、標準偏差に相関係数。
例として偏差値。出てくる量の次元の有無に注意。
線型代数の本には、抽象的なベクトル空間がお決まりのように取り上げられているのだが、これは数学関係者の趣味と言ってよいかも知れない。
ただ抽象的な理解はしばしば必要ともなるのであるが、1次結合、これが何らかの意味で可能な対象がベクトルの根源的な要請事項で、
一次結合が可能なベクトルの集団をベクトル空間という、くらいに思っておいて良い。
ベクトルおよびベクトル空間の具体例は、数を一定個数並べたもので、数ベクトル空間という。
他にも列挙しておくと、数列全体、関数全体、幾何ベクトル(変位ベクトル)、物理的ベクトル(測度、電界、力)。
普通異なる種類のベクトルの一次結合は考えない。具体的には、力と速度ベクトルを混ぜない、というか混ぜてはいけないことに注意。
繰り返すと、ベクトルとは一次結合が滞りなく行えるもののことである。
したがって、平面とか空間の平行移動を表わす量もベクトルということになるが、こういった幾何学的なベクトルでは、
ベクトルの大きさとか2つのベクトルの成す角よいった幾何学的な量を合わせ考えることができる。
こういった追加の幾何学的情報を抽象化したものが、ベクトルの間の内積と呼ばれるもので、その性質を列挙すれば、
(i) 対称性、(ii) 分配法則、(iii) 正値性で、代数的な (i), (ii) に、大小を規定する (iii) をつないだものが、
その本質である。
13節からあちらこちらつまみ食い。
ここでは実数をスカラーとするベクトルを扱ったが、スカラーを複素数にまで拡張することも可能で、しかも意味のあることではある。
おだやかに晴れわたり、御岳日和。と思ったのもつかの間、最低気温15度の虫の声。
本日のメニュー:直交系、直交分解、直交基底と直交行列です。少し盛りたくさん。
テキストの関連箇所も挙げておきます。拾い読みで良いので目を通しておくと良いことがあるかも知れない。
§2 直線と平面の幾何学(前期の初めに少し触れたのですが、座標系の扱いをもう一度復習)。
転置行列の性質 p.18, p.29
§16 平面と空間の一次式変換。
前回の内積の幾何学の内容を受けて、要約の5節に従って見ていきます。
まず、内積の定義と直交、数ベクトル空間 $R^n$ の標準内積の復習から。テキストでは、これを $R^n$ の部分空間 $V$ に制限して云々と出てきますが、
部分空間の話題は最後の方に先送りして、ここでは無視の声。
(内積を考えた)ベクトルの直交系・正規直交系から。これは座標を導入する際に考えた「基準となくベクトルの組」を一般化したものになっていて、
それを使うと内積が成分の積和計算(標準内積)に帰着します。
直交系と正規直交系の関係は単純なので、通常は正規直交系を問題にしますが、実際の計算では、規格化していない直交系も役に立ちます。
(正規)直交系の例として、3次元空間の中の平面に乗っていて互いに直交する2つのベクトルを思い浮かべます。
次に、正規直交系 $(u_1,\dots,u_m)$ があるときに、ベクトル $v$ の直交分解を \[ v = v_\parallel + v_\perp,\quad \text{$v_\parallel$ は $u_1,\dots,u_m$ の一次結合、$v_\perp$ はすべての $u_1,\dots, u_m$ に直交するベクトル} \] で定めます。大事な点は、 \[ v_\parallel = (u_1|v)u_1 + \dots + (u_m|v) u_m \] と具体的に書けて、このような分解がちょうど一つ存在すること。
$R^3$ であれば、互いに直交して大きさが $1$ のベクトルを3つ並べたものが、$R^3$ の正規直交基底ということになります。
ここで、3次元 ($n=3$) の場合のイメージを図にしておきます。
まず、原点を通る平面を $V$ とし、$V$ の上に乗っている正規直交系 $(u_1,u_2)$ を用意します。
そうすると、勝手な空間ベクトル $v$ は、$V$ に平行な部分 $v_\parallel$ と $V$ に直交する部分 $v_\perp$ の和に書かれ、平行な部分は
\[
v_\parallel = (u_1|v)u_1 + (u_2|v)u_2
\]
と具体的に表わされます。これを $v$ の $V$ への射影といいます。
証明はテキストの該当箇所にありますが、今の場合に即して書いておくと次のようになります。 ベクトル $v$ が \[ v = t_1u_1 + \dots + t_m u_m + v_\perp \] のように表わされたとすると、$u_j$ と 両辺との内積から、$t_j = (u_j|v)$ が出ます。 ということで、$v_\parallel$ は $v$ で定まり、大事な点と書いた等式が成り立ちます。 さらに、$v_\perp = v - v_\parallel$ と置くと、 \[ (u_j|v_\perp) = (u_j|v) - (u_j|v) = 0 \] と なることから、$v_\perp$ はすべての $u_j$ と直交することもわかります。
例 $u_1 = \frac{1}{\sqrt{3}} (1,1,1)$ を含む $R^3$ の ONS を沢山作れ。
$u_1$ で表されないベクトル、例えば $a = (1,0,0)$ を取ってきて、その直交分解を考えると、
\[
a - (u_1|a)u_1
= (1,0,0 - \frac{1}{3}(1,1,1) = \frac{1}{3}(2,-1,-1)
\]
が $u_1$ と直交することがわかります。そこで、これを単位ベクトル化した
\[
\frac{1}{\sqrt{2^2+1+1}} (2,-1,-1) = \frac{1}{\sqrt{6}} (2,-1,-1)
\]
を $u_2$ とすると、正規直交系 $u_1,u_2$ が得られました。
さらに、$u_1$, $u_2$ の一次結合で表わされない(と思われる)$b = (0,1,0)$ から
\[
b - (u_1|b)u_1 - (u_2|b)u_2 = (0,1,0) - \frac{1}{3} (1,1,1) - \frac{1}{6}(-1) (2,-1,-1)
= \frac{1}{2} (0,1,-1)
\]
途中で利用する $a$, $b$ をいろいろと取り替えることで、$u_1$ を含むさまざまな正規直交基底が得られることを実感します。
これを宿題とします。
最後に、正規直交基底と直交行列の関係を調べてお終いです。
こんどは $u_1, \dots, u_m$ を縦ベクトルと見て横に $m$ 個並べた $n\times m$ 行列を $T$ とします。
そうすると、
\[
{}^tT T = ((u_j|u_k))_{1 \leq j,k \leq m}
\]
と表されるので、$u_1,\dots, u_m$ が ONS であることと ${}^tT T = I_m$ が同値になります。
とくに、$m=n$ のとき、$u_1,\dots,u_n$ が $R^n$ の ONB であることと $T^{-1} = {}^tT$ となることは同値。
このような行列を直交行列 (orthogonal matrix) といいます。(「正規」がどこかに消えてしまいました。)
例
\[
\begin{pmatrix}
\cos\theta & -\sin\theta\\
\sin\theta & \cos\theta
\end{pmatrix},
\quad
\begin{pmatrix}
\cos 2\theta & \sin 2\theta\\
\sin 2\theta & - \cos 2\theta
\end{pmatrix}
\]
最初の行列は角 $\theta$ の回転を、後の行列は、直線 $y = x \tan\theta$ に関する折返しを表わします。
「回転行列」によりベクトル $(1,0)$, $(0,1)$ の行き先を図示し、回転であることを確かめよ。
ベクトル $(\cos\theta,\sin\theta)$, $(-\sin\theta,\cos\theta)$ が「折り返し行列」の固有ベクトルであることを確かめよ。
木枯らしの響きもまた御嶽日和。季節はようやく前へ。
本日のメニュー:
対称行列の直交対角化
です。ここは、丁寧にやるとかなり長くなるところなのですが、気合で一気に説明する予定。
そのあらましを以下に書きますので、参考にして、間を適宜埋めていただきます。
手取り足取りから脱するよい機会でもあります。ただ、どうにも詰まったときは、メールにてできるだけ具体的にご相談ください。
まず、前回の補足として、直交座標変換を学びます。これは2次元だと、座標の回転とか(ある直線に関する)折返しということになっていて、 もとの座標と新たな座標が直交行列で結ばれるという構図になっています。
一般の場合も似たようなものですが、3次元の場合を理解するのでも十分です。これを直接扱うことはあまり多くはないかも知れませんが、 直感が働く場合を具体的に経験しておくことは意味があります。
次に二次形式というものを導入します。これも一般の場合よりも、2変数・3変数で実感をつかみます。 概要には2変数の場合が書いてあるので、それが3変数の場合にどのように書けるかやってみます。
次に2変数の場合に、回転を施した新しい座標で、二次形式の形がどのように変化するか調べます。例6.3 のところです。 回転角を適切に選んで、二次形式が対角型になることを実感します。
変数の数が増えた場合も直交変換により同様の手続きが可能であるというのが、定理6.4 の内容です。 その証明には、半内積の不等式に直交分解を組み合わせた議論を使います。 ここのところの一般論がわかりにくければ、3変数(あるいは2変数)の場合に限定して何をしているのかを読み取るとよいでしょう。
来週は、2回目の試験です。試験範囲は、過去3回分の授業内容。
Q:二次形式の標準形の極値問題への応用について質問です。
二次形式を直交行列を用いた対角化によって標準形に直した後、どのように極値を判定するのかがわかりません。
A: これは、微積分の該当箇所と照らし合せて勉強します。
次がわかりやすいでしょうか。
math-fun.net
答えは、
(i) 固有値が2つとも正であれば、極小。
(ii) 固有値が2つとも負であれば、極大。
(iii) 固有値が正負に分かれたときは、極値にならない(が鞍点というものになる)。
(iv) $0$ を固有値にもつときは、いろいろな場合があるが、出くわすことは稀かも。
です。
本日は、復習のあとに2回めの試験でした。
[試験の講評] $\fbox{1}$ は、直交関係の基本を問うものでしたが、「一組の正規直交基底」で何を要求されているのかが不十分の人がそれなりの数に。
$\fbox{2}$ は一転して、パターン化で処理できることもあり、まずまずだったでしょうか。
Q: 試験は4点満点とシラバスにあったのですが、moodle では6点満点になっていて、どういうことでしょうか。
A: シラバスにある配点はその通りですが、特に評価すべき答案にはボーナス点がつきます。moodle のシステムでは、そういった細かいことが反映できないために、
6点満点の表示がなされているのでした。
今日も穏やかに晴れわたり、落ち葉も一段と。
本日のメニュー
ベクトル空間、基底、ベクトルの成分表示、基底の変換行列と成分の変換式
です。
基本的な表示式を書いておきます。
基底ベクトル $f_1,\dots,f_n$ を使って、ベクトル $v$ の成分表示をするときは、
\[
v = t_1f_1 + \dots + t_n f_n = (f_1,\dots,f_n)
\begin{pmatrix}
t_1\\
\vdots\\
t_n
\end{pmatrix}
\]
のように書きます。
こうすることで、行列計算が便利に使えて、基底変換行列と成分の変換式の関係が明快になります。具体的には
\[
\begin{pmatrix}
f_1 & \dots & f_n
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
e_1 & \dots & e_n
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
t_{11} & \dots & t_{1n}\\
\vdots & \ddots & \vdots\\
t_{n1} & \dots & t_{nn}
\end{pmatrix}
\]
で基底変換行列 $(t_{ij})$ を定めると、それぞれの基底に関する成分 $(x_i)$, $(y_i)$ は、
\[
\begin{pmatrix}
e_1 & \dots & e_n
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x_1\\
\vdots\\
x_n
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
f_1 & \dots & f_n
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
y_1\\
\vdots\\
y_n
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
e_1 & \dots & e_n
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
t_{11} & \dots & t_{1n}\\
\vdots & \ddots & \vdots\\
t_{n1} & \dots & t_{nn}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
y_1\\
\vdots\\
y_n
\end{pmatrix}
\]
より、
\[
\begin{pmatrix}
x_1\\
\vdots\\
x_n
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
t_{11} & \dots & t_{1n}\\
\vdots & \ddots & \vdots\\
t_{n1} & \dots & t_{nn}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
y_1\\
\vdots\\
y_n
\end{pmatrix}
\Longleftrightarrow
\begin{pmatrix}
y_1\\
\vdots\\
y_n
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
t_{11} & \dots & t_{1n}\\
\vdots & \ddots & \vdots\\
t_{n1} & \dots & t_{nn}
\end{pmatrix}^{-1}
\begin{pmatrix}
x_1\\
\vdots\\
x_n
\end{pmatrix}
\]
がわかります。
以上のことを具体例で確認していきます。
ようやく季節が暦に追いつき、鈴鹿の山にも雪雲の流れきて。
本日のメニュー:一次変換、基底、表示行列、基底の取りかえによる表示行列の変換
でした。テキストだと12節の辺り。
実は、変換の前に「写像」というのを学ぶのが順序というものでした。
時間の関係で詳しくはできないのですが、基本的なことは難しくないので、
例えば、これでも見てください。
テキストの付録にも少し書いてあります。
さて、ベクトル空間 $V$ における変換 $\phi:V \to V$ で、一次結合を保つもの、すなわち、 \[ \phi(t_1v_1+ \dots + t_m v_n) = t_1\phi(v_1) + \dots + t_m \phi(v_m) \] となるものを一次変換(線型作用素)という。 $V$ のベクトルを並べたもの $(v_1,\dots,v_m)$ と $m\times n$ 行列 $A$ の積を \[ (v_1,\dots,v_m)A = (\sum_i v_i a_{i1}, \dots, \sum_i v_i a_{in}) \] で定め、さらに $\phi$ の左からの積を \[ \phi(v_1,\dots, v_m) = (\phi(v_1),\dots, \phi(v_m)) \] で与えると、線型性の言い換えとして次が成り立つ \[ \phi((v_1,\dots,v_m)A) = \phi ((v_1,\dots,v_m)A). \]
前回は、ベクトルの成分が基底の取り換えでどう変化するかを調べた。
今日は、一次変換の「成分表示」と、それが基底の取り換えでどう変化するかが問題。
$V$ の基底 $(f_1,\dots,f_n)$ が用意されていると、各ベクトル $\phi(f_j)$ をこの基底に関して
\[
\phi(f_j) = \sum_i b_{i,j} f_i
\]
と表示し、正方行列を $B = (b_{i,j})$ で定めると、
\[
(\phi(f_1),\dots, \phi(f_n)) = (f_1,\dots,f_n) B.
\]
これを、形式的に $\phi(f_1,\dots,f_n) = (f_1,\dots,f_n)B$ と書けば、
\[
\phi = (f_1,\dots,f_n) B (f_1,\dots, f_n)^{-1} \iff
(f_1,\dots,f_n)^{-1}\phi(f_1,\dots,f_n) = B
\]
という関係が見えてくる。
すなわち、$V$ の基底 $(f_1,\dots,f_n)$ を介して、$\phi$ が行列 $B$ で表される。
これを $\phi$ の基底 $(f_1,\dots,f_n)$ に関する表現行列あるいは
表示行列という。
例として、$V = R^n$ の一次変換 $\phi$ を、正方行列 $A$ を左から掛けることで $\phi(x) = Ax$ により定める。
標準基底を並べたもの $(e_1,\dots,e_n)$ が単位行列 $I_n$ によって表されることに注意して、
\[
(\phi(e_1),\dots, \phi(e_n)) = (Ae_1,\dots,Ae_n) = (e_1,\dots,e_n) A
\]
と計算すれば、$\phi$ の $(e_1,\dots, e_n)$ に関する表示行列は $A$ そのものであることがわかる。
この段階では堂々巡りの計算になっていて、行列を一次変換に言い換えただけのものであるが、
標準基底以外の基底 $(f_1,\dots,f_n)$ を、取り替え行列 $T$ により $(f_1,\dots,f_n) = (e_1,\dots,e_n)T$ と表わして、
上の形式的な計算を続けると、$\phi$ の線型性により、
\[
(f_1,\dots,f_n)B = \phi (f_1,\dots, f_n) = \phi ((e_1,\dots,e_n)T) = (\phi(e_1,\dots,e_n))T = (e_1,\dots,e_n)AT
= (f_1,\dots,f_n) T^{-1}AT
\]
となり、$B = T^{-1}AT$ がわかる。
すなわち、基底を $(e_1,\dots,e_n)$ から $(f_1,\dots,f_n)$ に取り替えると、表示行列が
$A$ から $T^{-1}AT$ に変わる。
この形は、行列の対角化で出てきたものと同じものである。
ということで、行列の対角化は、一次変換の表示行列を基底の取り換えで対角行列にするという意味であった。
具体例として、二次形式の標準形でも出てきた場合を調べよう。実対称行列
\[
A = \begin{pmatrix}
a & b\\
b & c
\end{pmatrix}
\]
の定める一次変換を $\phi$ とする。すなわち、$\phi(v) = Av$ ($v \in {\mathbb{R}}^2$) である。
新たな基底として、標準基底を角 $\theta$ 回転させた
\[
f_1 = \begin{pmatrix}
\cos\theta\\
\sin\theta
\end{pmatrix},
f_2 = \begin{pmatrix}
-\sin\theta\\
\cos\theta
\end{pmatrix}
\]
を取ると、
\[
(f_1,f_2) = (e_1,e_2)T,
\quad
T = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta\\
\sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix}
\]
となり、これに $\phi$ を施した
\[
(\phi(f_1),\phi(f_2)) = (\phi(e_1),\phi(e_2)) T
= (e_1,e_2)AT = (f_1,f_2) T^{-1}AT
\]
から、$T^{-1}AT$ という形を得る。これを計算すれば、
\[
T^{-1}AT = \begin{pmatrix} \cos\theta & \sin\theta\\
-\sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a & b\\
b & c
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta\\
\sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
(a+c)/2 + \cos(2\theta) (a-c)/2 + b\sin(2\theta) &
b\cos(2\theta) + \sin(2\theta) (c-a)/2\\
b\cos(2\theta) + \sin(2\theta) (c-a)/2 &
(a+c)/2 - b\sin(2\theta) + \cos(2\theta) (c-a)/2
\end{pmatrix}
\]
となるので、$T^{-1}AT$ が対角行列になるのは
\[
2b\cos(2\theta) + (c-a)\sin(2\theta) = 0
\]
のときで、
\[
(\cos(2\theta),\sin(2\theta)) \perp (2b,c-a) \iff
(\cos(2\theta),\sin(2\theta)) \parallel (a-c.2b) \iff
(\cos(2\theta),\sin(2\theta)) = \pm \frac{1}{\sqrt{4b^2 + (a-c)^2}} (a-c,2b).
\]
$\pm$ の違いは、ベクトル $(\cos(2\theta),\sin(2\theta))$ の向きの選び方の問題で本質的ではないので、$+$ の方を取れば、
対角成分(固有値)は、
\begin{align*}
\frac{a+c}{2} + \frac{a-c}{2} \cos(2\theta) + b\sin(2\theta)
&= \frac{a+c}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{4b^2 + (a-c)^2}\\
\frac{a+c}{2} + \frac{c-a}{2}\cos(2\theta) - b\sin(2\theta)
&= \frac{a+c}{2} - \frac{1}{2}\sqrt{4b^2 + (a-c)^2}
\end{align*}
となる。
以上のことを、$a$, $b$, $c$ に具体的な値を入れていろいろ確かめることで、稽古せよ。
次回12月19日は3回目の試験となります。型にはまった計算主体の範囲なので、十分練習の上、点数の上積みを。
しばらく前に用意した動画への リンク1と
リンク2です。内容が微妙に異なるので、ご参考までに。
世間の教科書は、こういうことをやった後でないと、対角化の話ができないとでも思っているのでしょうか。趣味に走り過ぎであるような。
穏やかに冬晴れて、木の葉舞う中、ロウバイは花の準備を怠りなく。
今日は、復習のあとで3回目の試験でした。 期末試験まで残すところわずか。
LibreTextsというのを見つけました。 工事中だったり、玉石混交のようですが復習のお供に。
[試験の講評] $\fbox{1}$ は、直前の復習が効いたか、吐き出し法で処理しているひとが多かったように思いますが、
行列式でも構いません。
ただ、一次独立だけでは基底にならないので、そこの説明が必要になりますが、そこまで書いてある人は多くはありませんでした。
$\fbox{2}$ は、補講時の内容を復習していれば、単純計算ということになります。
具体的な回転角で問題は出しましたが、一般的な角で計算してそのあとで代入する方が間違いが少ないかも知れません。
元の行列と回転角の関係が特別なときは、対角行列にできない場合もでてきます。
そこまで理解していた人は、ごく少数だったでしょうか。
これまで3回の試験の合計点が7点以下の人は要注意です。期末試験は12点満点なので、挽回の余地はありますが。
確率行列と不変部分空間です。要約の10節を中心に、確率分布が定常値に収束すること、および定常分布の形について学びます。
これは詳しく調べるとけっこう長くなるのですが、授業ではその要点を一次変換の行列表示と結びつけて、筋を追ってみます。
これまでにやってきた様々なことが顔をだします。とくに、一次変換の表示行列が具体的に使われる(役に立つ)様子を実感していただきます。
次回は、これの続きと期末試験前の総復習をします。
3点 (1,2,3 で表わす) の間の確率的移動を考える。
簡単のために同じ点にとどまることはないとし、
1 から 2 に移動する確率を $a$, 2 から 3 に移動する確率を $b$, 3 から 1 に移動する確率を $c$ とする。
$j$ から $i$ に移動する確率を $(i,j)$ 成分とする行列 $S$ は
\[
S = \begin{pmatrix}
0 & 1-b & c\\
a & 0 & 1-c\\
1-a & b & 0
\end{pmatrix}
\]
と表わされ、どの列成分も $0$ 以上で足すと $1$ になっている。このような行列を確率行列 (stochastic matric) という。
縦和が $1$ という性質は
\[
\begin{pmatrix}
1 & 1& 1
\end{pmatrix}
S
= \begin{pmatrix}
1 & 1& 1
\end{pmatrix}
\iff
{}^tS \begin{pmatrix} 1\\ 1\\ 1\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix} 1\\ 1\\ 1\end{pmatrix}
\]
と書き表わされるので、
$\begin{pmatrix} 1\\ 1\\ 1\end{pmatrix}$ は ${}^tS$ の固有値 $1$ の固有ベクトルである。
そうすると、行列式が転置で変わらないことから、$1$ は $S$ の固有値でもある。
そこで、その固有ベクトルを求めると、
\[
S \begin{pmatrix}x\\ y\\ z\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}x\\ y\\ z\end{pmatrix}
\iff \begin{pmatrix}x\\ y\\ z\end{pmatrix} \propto \begin{pmatrix} bc-b+1\\ ac-c+1\\ ab - a+1\end{pmatrix} \equiv f_0.
\]
ここで、$0 \leq a,b,c \leq 1$ より、$f_0$ のすべての成分が $0$ になることはないことに注意。
つぎに、$\mathbf{R}^3$ の2次元部分空間 (一次方程式 $x+y+z=0$ の解空間) を
\[
V = \left\{ \begin{pmatrix} x\\ y \\ z\end{pmatrix}; \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x\\ y \\ z\end{pmatrix} = 0 \right\}
\]
で定めると、$V$ のベクトルを $S$ で移したものは再び $V$ のベクトルである。
このことを $V$ は $S$ の不変部分空間であるという。
この時点で、$f_0 \not\in V$ に注意する。これは、単純な評価
\[
\begin{pmatrix} 1 & 1 & 1\end{pmatrix} f_0 = 3 - (a+b+c) + ab + bc + ca \geq 3 - (a+b+c) \geq 0
\]
で、最後の不等式で等号が成り立てば、$a = b = c = 1$ となり、最初の不等式で等号が成り立たないから。
そこで、$V$ の基底として、例えば、
\[
f_1 = \begin{pmatrix} 1\\ 0\\ -1\end{pmatrix},
\quad
f_2 = \begin{pmatrix} 0\\ -1 \\ 1 \end{pmatrix}
\]
を取ると、$f_0,f_1,f_3$ は $\mathbf{R}^3$ の基底になる。
$S f_1$, $Sf_2$ を $f_1$, $f_2$ の一次結合で表わせば、
$S f_1 = -c f_1 + (1-a-c) f_2$, $Sf_2 = (b+c-1) f_1 + (c-1) f_2$ となる。すなわち、
\[
(Sf_1,Sf_2) = (f_1,f_2)
\begin{pmatrix}
-c & b+c-1\\
1-a-c & c-1
\end{pmatrix}.
\]
さらに これから、
\[
(S^nf_1,S^nf_2) = (f_1,f_2)
\begin{pmatrix}
-c & b+c-1\\
1-a-c & c-1
\end{pmatrix}^n
\quad n=1,2,3,\dots
\]
が分かるので、3次行列 $S$ の べき の振る舞いが、2次行列
\[
R = \begin{pmatrix}
-c & b+c-1\\
1-a-c & c-1
\end{pmatrix}
\]
の べき の振る舞いに還元される。
$R$ の固有多項式は
\[
\begin{vmatrix} t+c & 1-b-c\\
a+c-1 & t+1-c
\end{vmatrix}
= t^2 + \sigma,
\quad
\sigma = ab + bc + ca - a-b-c + 1
\]
となるので、$\sigma$ ($0 \leq a,b,c \leq 1$) の動く範囲をまず押さえておこう。
これは素朴に処理すればよい。
まず、$a$, $b$ を固定して、$0 \leq c \leq 1$ の関数と思うと、
$\sigma = (a+b-1)c + ab - a- b +1$ の最大値・最小値は、$\sigma(a,b,1) = ab$ か $\sigma(a,b,0) = (1-a)(1-b)$ である。
そこで、これらの最大値・最小値を調べると、
(i) $ab$ の最大値が $1$ ($a=b=1$)、最小値が $0$ ($a = 0$ or $b=0$)。
(ii) $(1-a)(1-b)$ の最大値が $1$ ($a=b=0$)、最小値が $0$ ($a=1$ or $b=1$)。
以上から、$\sigma$ の最大値は $1$ ($a=b=c=1$ or $a=b=c=0$)、
最小値は $0$ ($\{0,1\} \subset \{ a,b,c\}$) がわかる。
この両極端の場合は特殊で、$\sigma = 1$ であれば、$S$ は巡回置換になり、
$\sigma = 0$ であれば、任意パラメータが残るものの、
$R^2 = -R$ となり 単純な振動を繰り返すだけであるので、以下、$0 < \sigma < 1$ とする。
2次方程式の判別式 $1 - 4\sigma$ の符号で3つの場合にわける。
(i) $0 < \sigma < 1/4$: $R$ の固有値は負で、$(-1,-1/2)$ と $(-1/2.0)$ に一つづつある。
\[
R \sim \begin{pmatrix} \alpha & 0\\ 0 & \beta \end{pmatrix},
\quad
R^n \sim \begin{pmatrix} \alpha^n & 0\\ 0 & \beta^n \end{pmatrix}
\to \begin{pmatrix} 0 & 0\\ 0 & 0\end{pmatrix} \quad
n \to \infty.
\]
(ii) $1/4 < \sigma < 1$: $R$ の固有値は互いに共役な複素数 $\lambda$ で、$|\lambda|^2 = \sigma < 1$, $\lambda + \overline{\lambda} = -1$ を満たす。
\[
R \sim \begin{pmatrix} \lambda & 0\\ 0 & \overline{\lambda}\end{pmatrix},
\quad
R^n \sim \begin{pmatrix} \lambda^n & 0\\ 0 & {\overline{\lambda}}^n \end{pmatrix} \to \begin{pmatrix} 0 & 0\\ 0 & 0\end{pmatrix} \quad n \to \infty.
\]
(iii) $\sigma = 1/4$: $a = b = c = 1/2$ のときは $R = -I_2/2$ で、それ以外は
\[
R \sim \begin{pmatrix} -1/2 & 1\\ 0 & -1/2\end{pmatrix},
\quad
R^n \sim \begin{pmatrix} (-1/2)^n & n(-1/2)^{n-1}\\ 0 & (-1/2)^n\end{pmatrix} \to
\begin{pmatrix} 0 & 0\\ 0 & 0\end{pmatrix}
\]
雪雲来たりて 梅とまどいながらも、季節はまた一歩前に。
前回の補足と、後期で学んだ項目を駆け足で。
次回の最終試験は、過去3回の試験範囲から2題、確率行列のところから1-2題の合計3−4題の予定です。 時間はこれまでの2倍、点数も2倍(ボーナス点まで入れると3倍)。
体調不良者などを対象にした追試は1月30日(木)に実施の予定です。 該当者はメールでご連絡ください。事後でよいので欠席届けを出していただくことで、受けられるようにしたいと思います。
インフルエンザがはやっております。急病などで試験を欠席する場合は、それを示す記録等を確保して、メールでご連絡ください。
寒風吹き抜ける中、最後の試験を行いました。
今回の点数も moodle で確認できます。総計12点以上が合格。 合格者の成績区分は、ボーナス点も加味した点数で判定します。
[講評]:
$\fbox{1}$
大前提として、読んでわかる説明になっているかというのがあります。メモのような箇条書きに近いものは減点しました。
固有値の説明で、行列式を使った方程式の解であるとするものがかなりいました。
これは固有値の性質ではありますが、定義ではありません。
対角化と固有ベクトルの関係も明確に述べた人はごく少数でした。
$\fbox{2}$
「直交行列とは、直交する行列のことである」と書いた人が複数いました。こういう答案は、無意味を通り越して失礼です。
実対称行列の固有値が実数であることに言及した人はいませんでした。
$\fbox{3}$ 授業で説明したことの一部を取り上げたのですが、表示行列(表現行列)が何かが分かっていない人が大多数でした。
$1$ が確率行列の固有値である理由も、授業で述べた方法を使った人は数えるほど。
$\fbox{4}$ 行列のべきの極限が固有値の大きさと結び付けられることを理解していた人はこれもわづかでした。
説明の問題は総復習の時点で触れたので、事前に解答を作成しておけば、ここまで低い点数にならなかったはずなので、準備不足が目につきました。
確率行列の問題についても、復習してあれば、ここまで点数が取れないことはないはずなので、そもそも投げていた人が多かったのでしょう。
一方で、満点かそれに近い点数の人は、自信を持って前に進まれますよう、期待しております。
長かった授業もこれでオシマイです。理想的なものは一度もできなかったのですが、これは相手もあることなので、
旅のをわりの鷗どり、浮きつつ消えゆくもまた。